「スカイコード」感想
いやぁ……ここまで心に来るとは思わなかった。
MELLOW の作品は以前一度だけ「アサガオは夜を識らない。」をプレイしたことがあり、和姦ものなのに昏くドロッとした様な雰囲気とテキスト的な難解さの二つの特徴をその際に感じ取られてあんまり自分好みではないという結論を出してしまってその後 MELLOW の作品に一切手をつかずにここまで至ってきた。ちなみにここで言う「テキスト的な難解さ」は淡々と物語の流れを読むだけではなく行間を読まないと作者は何を伝えたいのか分からない、小説というより詩を読んでるみたいな感覚のこと。
今回の作品もその二つの特徴が継承、徹底されていたけど、何故か純愛作にそれが嫌いだった自分にちょうどいいスパイスみたいなものになっていて、すっかりハマってしまった。その感覚は、垂花さん自身の言葉を引用すると、「海底から月を見上げるように、ダウナーな悦楽」「昏く澄んだ優しい夜に包まれる感覚」、まさにそうである。まあ和姦純愛ものにそんなものを楽しめるようになった自分も変わったってことでもあるか……。
さて、本題に入ろう。
本作において立ち絵のある女性キャラは 4 人いるけれど、実際攻略可能なキャラクターが 2 人だけなのでヒロインは 2 人とする。
シンジュ
ぶっちゃけこの作品を好きになったのはシンジュがいたからである。何故かというとシンジュはエロい。
そう、エロい。めちゃくちゃエロい。チンコにグッとくる。
シンジュのエロシーンがめちゃくちゃ好みで、本来抜くつもりのないシーンを、それを読み終わった後何故か無意識に抜いてしまったという謎の引力がある。というか和姦純愛ものに上目舌出しイキ顔を取り込むのなんなん?って MELLOW 全体社員に小一時間ほど問い詰めたい。グッドジョブ。
いやまあエロいだけじゃなくてかわいいし性格が好みだしただ何より一番感じ取れたのはエロさだからそれを一番の理由にしただけ。本当本当。
そんなワイ大好きなシンジュ√は、当然本作における一番好きなルートでもある。
シンジュ√は自分が最初にクリアしたルート(実際はあめルートなんだが、前述の通りあめはヒロインではないのでノーカン)。全通後から振り返ってみると先に天使√をクリアしてからシンジュ√に入るほうが良いかと自分は思ってる、そうすると先に天使√で容赦なく命絶たされたシンジュを見てから記憶がなくなったけど生き続けるシンジュ√を見ることができるから心が救済されられるはず。シンジュが死ぬシーンを読むの本当に辛いんだよ……。
最初にシンジュが天使√で自殺したのを読んだ時正直何故自殺しようとしたのか分からなかった。その理由は実際物語の中に何回かはヒントとして出されていたが、あんまりにもちっぽけすぎてほとんど気付かなかった。シンジュが思死念慮を秘めていることに気づいたのは何回も読み直した後のことだった。その一つは、ソーダとあめさんの死が「羨ましい」とシンジュが自白した。
羽を持っているから梯子やソーダたちと出会えて一緒に眩しい時間を過ごしたから、「夢」の中が眩しすぎるから自分が本来持っている思死念慮が抑えられていて、羽を帰して、「恋」という願いを無くして、羽を拾った前の自分に戻ったから、記憶を無くしたとしてもシンジュは結局死への一歩を踏み出す。要は
羽を返さない → 空に溺れる
羽を返す → 思死念慮で死ぬ
という理不尽な無理ゲー。それでシンジュ√でシンジュが自分の記憶を消すと提案したのも納得ができる。
逆に天使√で梯子がシンジュを救うために羽を帰らせたのに、それが逆手になってしまってシンジュを羽を拾う前の状態に戻してしまった。
シンジュ√でソーダとあめさんの死が「穏やか」とシンジュが廃ビルの屋上で言ったけど、天使√のシンジュの死も穏やかだったと自分は思っている。だからそれでいいじゃないかと、おめでとうと言ってあげたいけどやっぱり生きていて欲しくてシンジュ√で記憶を捨てたけれど生き残れたのがせめての救いだと感じていた。
それと天使√でシンジュの告白シーンは一番きれいだったと自分は思っている。そんなシンジュが一番きれいなシーンが、シンジュ√の中ではないという矛盾を最初は気にしていたけど、シンジュ√の中の感情は偽物が紛れているからこういう本物の純粋な感情をその中に取り込むのではなく、別のルートに入れたのではないかと自分は勝手に解釈している。
ちなみに、漆月雫の本名ではなくシンジュと自分が呼び続けているのはその名前が出会いから呼び続けている特別なものだから。まあ実際オフ会って本名呼ばないでしょうし、ニックネームを呼ぶほうがしっくりくるしね。
天使
あまり好きではないルート。
天使がペネムのままだったらとやかく言うつもりはないけど途中から何故か知らない人格の人に変わっちゃってさらに知り合ってからあまり時間も経てないのにその知らない人格が何故か急に梯子を好きになっていてみんなでハッピーエンドみたいな展開になってなんなんこれってぶっちゃけ思っている。
その新キャラ本当にいる?????
それと天使が何故天(そら)を救ったもの理解できていない。交通事故なんて毎日行っているのに何故天を救うと思った?に関しても全然語っていなかった。
そんなこんなで、新キャラの登場によって本来良く出来ていた物語が全部水の泡になってしまった。
あめ
シンジュの次にくらいエロい。
特に何も思わなかったけど、強いて言えば義父の言いなりにされてるエッチシーンが見たい。
分身とは言え考えてみればこの女何人の男と関係を持っているんだ……?
明日香
一部処女厨の間で本作が「地雷」「NTR」と呼ばれる根源のキャラ。
自分的には碧星はモブキャラに分類されているけど、そうと思わない人が結構いるらしい。
碧星は、第一印象は清楚すぎるから、「清楚な女ほど深い闇を秘めてる」定理で自分の中で予防線を予め引いていたから、最初から感情移入し過ぎずにプレイしていたから、レイプされたことがある事実が判明された時特にダメージはなかった。
これは自分的にも少し意外で、以前の自分なら同じように寝取られた!っと騒いでいたかもしれないけど、意外とそんなことはなかった。
多分ゲームの中でオジサンが言ったように、
でもー、なんでだったんだろう?
今好きな人に恋人や結婚相手が居ても、そっかーで
済ませられるのに
好きな人が恋人がいるから、処女じゃないから、清廉さとか純潔さを損なわせてるような感傷を抱く歳じゃとっくになくなったかもしれない。
だからおっさんはみんな NTR 好きなんだもんね!(暴論)
本作のもう一つのサプライズは、音楽。ハーフプライスのわりにボーカルソングは 4 曲作られていて、しかもどれも適当に作られてるようなものではなくいい曲である。特にシンジュの告白シーンで流れる「シンデレラ」は個人的に一番好き、ゲームをクリアした後わざわざ OST を一枚買ったくらいこの作品の曲がグッとくる。
全体的に見て本作はハーフプライスの作品としての出来が悪くないと思うが、万人向けの作品ではないのも確かである。特に雰囲気とテキストの癖が強いから好きになれるかどうかは人によって異なるだと思う。
今回のことで今後も MELLOW と垂花さんの作品に注目してみようと思う。手始めに「2045、月より。」でもやってみようかな。