「アンラベル・トリガー」感想
「創作彼女の恋愛公式」に続く工藤啓介さんの新作。特徴はやはりテンポがいいというところかな、創作彼女もアントリも文章を進める際にキャラクターのセリフがナレーションより圧倒的に多いからサクサクと進行できるのはエロゲというジャンルにおいてすっごくいい点だと思う。メインキャラクター全員もそれぞれの芯となる個性がありながらお茶目な一面を持っていて会話してる際にそれぞれの反応を見るのが楽しかった。
物語に関しては制度も種族も異なる対立しあう合衆国、連邦、帝国三つの国の間で出来た中立特区を舞台にして、人種差別や戦争と平和をメインに描きずつ三つの国のお姫様とイチャイチャしていくものである。
三つの国の我々の世界の中の原型はそれぞれ WW2 時期のアメリカ、ソビエト、ドイツで各自民主主義、共産主義、君主制(厳密に言うとドイツは君主制じゃないけど、ヒトラー個人の権力は憲法を凌駕するから似たようなもんか)を制度とする。
中で一番メインに描かれているのは人種差別、種族と種族の間のわだかまりである、そんな中で投げてきた一つの質問は「人種の違いは本当にあるのか」だった。個人的に思うんだが、種族の違いは実在すると思う。異なる地域に住むと小さい頃から生活環境や風習も違うから思想の根本に軋轢が生じるのは避けられない。しかし種族という大きい枠の中には無数の個体が存在する、個体には多様性が存在する。種族に対する固定観念は多様性のある個体には当てはまらないという思想は正しいと思うが、種族に固定観念を抱くのも間違ってはいないと思う。結局当事者の主観でどう切り分ける次第によるもの、人は完全に論理的に思考するように都合よく出来ていないし、頭では理解できていても感情では納得できない場合も沢山あるから。
三つのヒロインの中に一番好きなのはセンターヒロインたるミリセント殿下。現実味を帯びてない夢を抱きあがきながらそれをやり遂げる姿勢も好きだし、お茶目な一面もあって可愛かった。それに現実では実現できない夢だからこそせめて現実じゃないところでそれを実現させてあげたい気持ちがある、その指導者の人格魅力に惹かれる。
それにしても工藤啓介さんはエロシーン書くの下手くそだな、まあそういう目的でプレイした訳じゃないけど全然使えなかったぞ……