呪縛

長瀬琴乃のイディオムのこと。


琴乃に対して、自分は担当でもないし特になにか特別な思いがあるわけでもないけれど、ただここ最近のアイプラのメインストーリーを読むと、特に I-UNITY 以来の琴乃を見るとつい色んなことを考えてしまう、何か書き留めなければならない、とつい思ってしまう。

元々琴乃は何か特別な才能があるわけでもないし、努力一筋でここまで来られたような人だ。I-UNITY でスリクスに負け、さくら達が勝って見事に BIG4 を手に入れて今まで同じラインで立っていた仲間がすでに自分の遥か前まで進んでいたことに気づいた。天動や神崎みたいにしっかりと自分を持っているではなく繊細な人だから己の情けなさに溺れてしまい、そのまま不調が続く。IMF で月ストが終演後、さくらから琴乃に送ったメッセージ

「月ストならもっともっと凄いところにいけると思う。もう一度琴乃ちゃんたちと同じステージに立てる日を楽しみにしてるね」

と書かれていて、既に前に走っているさくらは相変わらず琴乃を対等なライバルとして見ているを知り、普通なら琴乃はそれで闘志がいぶりだされるかもしれないが、劣等感に覆われている琴乃にとってそれは焦りと自分自身への責めに変わる。


「ライバル」をいうと最近やっているエロゲを思い出す。

さくらと琴乃。草薙直哉と夏目圭。

人生の道を歩む上に良いライバル(友)に恵まれるのは素晴らしい事だ。だがそんな二人は常に対等なわけではない、むしろ完全なる対等的なライバルを見つけるのはほとんど不可能である。それで対等じゃないとどうなる?一人は天才、一人は才人。天才がいっとも容易く得たものが才人はとてつもない努力をしてからやっと天才の足元に届く、そんな状況で才人はどんな思いを抱くんだろう。嫉妬は当然、さらに言えば天才と一緒にいるだけで劣等感を感じてしまい一緒にいると辛くなってだんだん言い訳を付けて疎遠する。そんな状況で前向きになるのは簡単なことじゃない、それを何より現実で生きている私たちは知っている。

そう、物語の中だけのことではない、生きていく各々みなの心の中には手がかりがあるはずだと思う。

時に自分は天才側で、時には才人側である。私も幾度か才人側に回されたことがあったが毎回、それに耐え切れず逃げ出すか自分に言い訳を言い聞かせ続けてきた、その気持ちはよく知っている。思い出してみれば本当に一度もちゃんと正面からその感情と戦ったことがないな、全部逃げっぱなしだ。おそらく知らないだけで今もそんな感情何かから逃げ続けているかもしれない。だから真っ正面から戦う人を見ると「すごいな」と思わず心からそう思うし、応援したくなる。それは自分がしなかったことに対しての代償行為なのかはわからないけどね。


さてそんな琴乃なんだが何故ここまで私が気になってしまうんだろう。恐らくそれは、琴乃が言う「同じ嫉妬でも負けるもんかって前向きに思えたらいいんだろうけど……今はそれも無理だと思うから」とのセリフ。そう、嫉妬!これなんだよこれ!これがアイプラというゲームが他のアイドルゲームとまったく違うところ。夢と希望を謳う他の生温いアイドルゲームのシナリオでは絶対に有り得ないアイドル達の本格の生々しい負の感情。そんな人間臭さが、私を琴乃に親近感を感じ、或いはみっともない自分に重なって見えたのかもしれない。思えば I-UNITY でスリクスに負けて神崎と井川に慰められていて、琴乃は NEXT VENUS GRANDPRIX でリズノワを負かしたことについて不意に「ごめんなさい」と神崎に伝わって、それに対して神崎は真顔で「最上級の侮辱」と評した時も、「やっぱこれはアイプラだなぁ」と思えたことがある。そしてどりきゅんに負けてその二人とやり取りしている時意外に小南から「もがいてあがくヤツを突っぱねるほど、人として終わってねえよ」とのコメントを貰った時も「どりきゅんは意外にいいやつじゃん…」と思った。アイプラはそうやってキャラ一人一人のモットーを立て、ぶつかって、交わりながら物語を生み出している。ユーザーとして最初はキャラの外見、徐々に個性、最後はそのキャラの物語に惹きつけられ共感し好きになっていく。正に朝倉社長が言う「アイドルに必要なのは物語」である。だからライブの時琴乃が「未来模様」を歌っている最中に泣いたのも彼女の生き様と歌詞に共感したせい。

「正しさとは、痛いものだ」

思えば最初にアイプラのプロモーションを見た時もそう。汗だくのキャラ達のイラストを見て一瞬私の目が惹きつけられ、何の迷いもなくプロモーションをクリックした。それを言うと外野から「どうせ涙商法でしょ」と言われかねないがそんな涙商法とか知らんしエモみを感じた方が負けだからそんなのどうでもいい。

ここまで来て「プライド」というこのゲームにおけるコンセプトを一番表現しているキャラはおそらく琴乃だと思う。いつでも努力してる人の姿を見るのは嫌じゃないし、それは女の子だったらなお更だし応援したくなる。それにワシはこういう青春物語に弱いからなぁ…だから特に担当でもないキャラなのに私をここまで何かを書き留めたい衝動を搔き立てたのかもしれない。


そんなこんなで、この文章を書いているうちにメインストーリーがまた動き出している。願わくばそれは彼女が暗いドン底を抜け出す、月の光を手にする物語の前触れであるように。

琴乃が自身への呪縛から解き放たれる日を期待して待っている。

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